華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「俺が本当に安全だという確証もないのに、どうしてそこまで信じられる?」


そう聞かれると、どうしてなんだろう。

セイディーレはきちんと否定したわけではないし、真実はどうなのかわからない。にもかかわらず、彼を信じることができるのはなぜか。

少し思案して、浮かんだ答えはたったひとつ。


「そんなの……好きだから、っていう理由以外ないわ」


それしか出てこなくて情けなく思いつつも、この想いだけは揺らがないと開き直ると、あっけらかんと答えることができた。

セイディーレは一瞬目を泳がせ、瞼を伏せる。


「どうして、俺なんかを……」


ぽつりと呟き、私と目を合わさずにさらに言う。


「お前は王太子と結婚する身だろ。不毛な想いなど、持っても無意味だ」


そう吐き出す彼の手は、なにかを堪えるように拳を握っている。

……不毛な想いは持っていても無意味? 確かに、この恋に未来なんてないだろう。でも、私はそんなに悲観してはいない。


「そうかしら」


笑みを浮かべて異論を唱えようとする私を、彼の瞳が捉える。


「誰かを本気で愛することができた。それだけで、私にとっては十分意味のあることよ」

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