華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「ここはお前のような小娘が来るところではない。さっさと去れ」


軍服姿の男は、腰につけた鞘に剣を戻しながら、素っ気なく言う。けれど、ここまで来て引くわけにはいかない。


「……私、どうしてもこの森で探さなければいけないものがあるんです。それを見つけるまでは帰れません」


まだビクビクしてしまうけれど、しっかりとした口調で言った。

私をじっと見下ろしていた彼は、突然馬の背に手をついて動き出す。裏地がワインレッドのサーコートをなびかせ、ブーツを履いた長い脚で軽やかに地面に降り立った。

そして、私と距離を詰めてきたかと思うと、白い手袋をした手を伸ばしてくる。

なっ、なに!?

ギョッとする私の顎をくいっと持ち上げ、観察するように見つめられて、息が止まりそうになった。

けれど、宝石のような瞳は本当に綺麗で、なんだか吸い込まれそうになる。

鼻も高く、唇は薄めだけど形が良くて、こうしてよく見るとかなり顔が整っていることがわかる。

歳も若そう。二十代前半くらいかな?

見つめ合った数秒間でそんなふうに分析していると、顎に当てられていた手が離れ、今度は私の耳にかかった長い髪を掻き分ける。

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