華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
今、あなたはどこで何をしているの? 私、もうすぐ結婚しちゃうんだよ。

……と、心の中でいくら呼びかけても、返事が来ることなどない。

望んでいる人が現れるはずもない景色を見ているのも虚しく、金色の花の刺繍とフリルがあしらわれたドレスを持ち上げ、窓から離れた。

すると、ドアがノックされ、私はなるべく明るい声で「はい」と返事をする。


「リルーナ姫、ハーブティーはいかがですか?」


優しい笑顔で入ってきたのは、世話係のソルレだ。
痩せても太ってもいない小柄な体型で、笑うとえくぼができるところが可愛らしい。

四十代前半の彼女は、十八歳になったばかりの私にとって、母親のような存在。本当の母は、私が幼い頃に亡くなってしまったため、昔からとても慕っている。

ふわりと微笑み、「お願い」と言うと、ソルレは部屋の中央にあるローテーブルでハーブティーを淹れ始める。


「緊張していらっしゃるかと思って、リラックス効果があるオレンジフラワーにしてみましたよ」


ソファーに座る私に差し出されたカップからは、甘くてフルーティーなオレンジの香りが漂う。そのいい香りを吸い込み、ふぅと息を吐く。


「確かに、ちょっと緊張するかも。これまでひっそりと暮らしてきた私が、皆の目にさらされるんだものね」


自嘲気味に笑い、ゆっくりとカップに口をつけた。

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