華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
“エサをまいてある”というのはひょっとして、セイディーレに恋人がいるという噂を流しておいた、ということ?
その恋人が私だと、わざと山賊に気づかせ、ここに来るように仕向けたんじゃないだろうか。
「姫様も危険な目に遭うかもしれないから、すぐに連れて帰ると抗議しましたが、『山賊がどこかに潜んでいる昼間より、私が彼らの気を引いている夜のほうがいい』と言って聞かなくて……。なんとも無骨な真似をする」
怒ったような、呆れたような口調で言うセアリエの腰にしがみつきながら、私は離れていく別荘のほうを振り返る。
すると、ここに来た日に夕日を見た橋の上で、山賊らしき数人と戦う騎士たちの中に、軍服姿の彼がいるのも見えた。
「セイディーレ……」
華麗に剣を振るう彼の姿に、胸の奥からじわじわと熱いものが込み上げる。
無骨なんかじゃない。彼は危険をすべて抱えて、自分が盾になってくれたのだから。
わずかな隙も見逃さない先鋭な瞳、守るもののために盾となる頼もしい背中。彼のそれを見ていると、なぜか不思議な感覚に陥る。
あれ……あの光景、以前にも見た気がする。
いつどこで見たんだろう。魔物に襲われそうになったとき? いや、たぶんそれよりもずっと前に……。
その恋人が私だと、わざと山賊に気づかせ、ここに来るように仕向けたんじゃないだろうか。
「姫様も危険な目に遭うかもしれないから、すぐに連れて帰ると抗議しましたが、『山賊がどこかに潜んでいる昼間より、私が彼らの気を引いている夜のほうがいい』と言って聞かなくて……。なんとも無骨な真似をする」
怒ったような、呆れたような口調で言うセアリエの腰にしがみつきながら、私は離れていく別荘のほうを振り返る。
すると、ここに来た日に夕日を見た橋の上で、山賊らしき数人と戦う騎士たちの中に、軍服姿の彼がいるのも見えた。
「セイディーレ……」
華麗に剣を振るう彼の姿に、胸の奥からじわじわと熱いものが込み上げる。
無骨なんかじゃない。彼は危険をすべて抱えて、自分が盾になってくれたのだから。
わずかな隙も見逃さない先鋭な瞳、守るもののために盾となる頼もしい背中。彼のそれを見ていると、なぜか不思議な感覚に陥る。
あれ……あの光景、以前にも見た気がする。
いつどこで見たんだろう。魔物に襲われそうになったとき? いや、たぶんそれよりもずっと前に……。