華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
その一件から、リルーナは注意深く扱われるようになり、俺も『くれぐれも気をつけるように』と言われていた。

しかし、普段はまったく普通の女の子で、そんな危険な魔力を秘めているということなど忘れてしまう。だから、迂闊だったのだ。

リルーナのことをどこかから知り、力を悪用しようとする人間がいたら、彼女を拉致しに来るかもしれないというのに。

目の前にいる男たちは、まさにそういう目的で近づいてきたのではないか、と疑った通り、彼らは卑しい笑みを浮かべてこう言った。


「お姫様、ちょっと俺らと一緒に来てくれないか? いいモノをやるからさ」

「そこのお坊ちゃん、ケガしたくなかったらどいてな」


子供扱いされてカチンときたというせいもあるが、それよりリルーナを守りたくて、俺は剣を構える。


「ケガをするのはあんたらのほうだ。リルーナは渡さない」


王族でも、剣の稽古には人一倍打ち込んできたのだ。少しは張り合えるはず。

挑戦的な俺に、男たちの顔つきも変わり、短剣を抜く。

「生意気なガキめ!」と吐き捨て襲ってくる彼らに、自分を奮い立たせて立ち向かった。

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