華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「どうやって消し去るというんだ?」

「クラマインにはとても優秀な薬師がおります。彼なら、忘却の薬を作ることも難しくはないでしょう」


父の言葉を聞き、そういえばマジルヴァというおじさんがいたな、と思い出した。

どんな薬も作ってくれるため、巷では魔法使いみたいだと言われている人物だ。確かに、彼なら可能かもしれない。

顎に手を当てる陛下は、納得したように頷くものの、まだ懸念を捨てきれずにいるようだ。


「リルーナの力のことを知っているのは、私たち家族も含め、城の中にいる者だけだ。城内の皆には薬を飲ませられるかもしれないが、万が一庶民の中で噂を耳にした者がいたとしたら手に負えない」


確かに、どこまで話が漏れているかわからないのだから、城内の人間の記憶を消しても完璧ではないだろう。

陛下は困り果てたように額に手を当て、苦しげな声で呟く。


「なぜリルーナにこんな力が……。私が代わってやりたい」


彼の気持ちも痛いほどわかり、胸が締めつけられると同時に、“代わる”というひとことで、ふとある考えが思い浮かんだ。

リルーナを完璧に守るには、きっとこれしか方法はない。

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