華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
魔物と聞いて思い浮かぶのは、暗黒の闇から現れる、角が生えた大きな獣のようなイメージ。

確かに不気味な森だけど、そんな恐ろしいものが住んでいるの? 本には何も書いてなかったのに……というか、それを先に言ってよ!


「ま、魔物って、どんな!? もしも会ったらどうすれば──」

「お前に教える義理などない」


思わず泣きつきそうになったけれど、冷たくきっぱりと返され、私はピシッと石化する。

ちょ、ちょっとくらい教えてくれてもいいのに……。

愕然として押し黙ると、城のほうへと続く道から、ひとりの男性が馬に乗って現れた。こちらはモスグリーンの制服を着ていて、完璧に騎士なのだろうとわかる。

彼はこちらに近づきながら声を投げかける。


「セイディーレ閣下、どうかされましたか?」


セイディーレ、っていう名前なのね、この人。というか……、“閣下”と呼ばれているということは、騎士の中でも高位の人じゃない!

ハーメイデンではセアリエがそうだけれど、この若さで閣下ってすごいことよね?

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