華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
許されぬ愛の行方
クラマインに戻ったあと、俺は新たにセイディーレという名を与えられ、父からエングレンス家に仕える近衛騎士として生活するよう命じられた。
城の中で、俺が少しでもこれまでと変わらない生活を送れるように、という計らいからだろう。
城内の者には、国にはびこる悪しきものを根絶やしにするため、俺を秘密裏に騎士として送り込む、という一大計画を実行すると伝えられた。
執政官からは反対されたようだが、魔物を退治できるのはフレイヴだけだと父が主張すると、渋々納得してくれたらしい。
実際、他の者には手に負えない魔物や、人々を襲う山賊にはだいぶ困らされていたため、そのような方法を取るのも致し方ないと最終的には判断されたのだ。
やるとなったら、騎士として本気で使命を全うしよう。
そう決意し、魔物だけでなくどんなやつも黙らせるくらいの強い男になろうと訓練し、冷酷な人間になるよう心を閉ざした。
黒い軍服に身を包み、すべての騎士の上に立つ指揮官の座を勝ち取った頃には、フレイヴの面影はすっかりなくなっていた。
まぁ、根っから冷酷にはなれず、アンジェやエトワルのような子たちに手を差し伸べたりもしていたわけだが。