華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
自分の気持ちを押し殺し、彼女にも冷たい言動で釘を刺しておいた。きっとこれで幻滅しただろう。

そう思っていたのに、成長したリルーナは思った以上に頑固で、とてもひたむきで。どれだけ俺に冷たくされても、まったく引く気配がない。

彼女も同行してきた二国間協議の日、城内を案内しているときに、彼女の想いの強さを思い知ったのだった。


あのとき、父がなぜ俺を案内役に指名したのか意味がわからなかったが、今となってはよかったと思っている。いち早く、山賊を発見することができたから。

怪しい存在を確認したとき、すぐに狙いはリルーナだということに気づいた。

おそらく、山賊もどこかでリルーナの力のことを知り、悪用しようとしていたに違いない。彼らを騙せなかったことが悔やまれる。

父もアドルク陛下も、それに感づいたはずだ。だからこそ、唯一すべてを知っている俺にリルーナの護衛を任せてくれたのだと思っている。


そのときから、俺の中でずっと眠っていたものが覚醒してしまったような気がした。

この手でリルーナを守りたい。彼女のたったひとりのナイトでありたい──という本心が。

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