華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情

俺とリルーナの噂を聞きつけて別荘に近づいていた山賊もすべて捕らえ、今回の事態はなんとか収束した。

これでまた普段の生活に戻るものだと思っていたが、予想外の展開に驚愕することになる。


山賊の騒動が落ち着いたあと、父から伝えられたのは、『本来の姿に戻るべきときが来たぞ』という言葉。

その意味が“王子に戻れ”ということだと理解した俺は、動揺と困惑を隠せなかった。まさか、その座を明け渡してもらえるとはまったく思っていなかったから。

今や冷徹な指揮官として生きている俺が王子に返り咲くだなんて、国民はどう思うだろう。

それに、リルーナの婚約者はジルだと、ハーメイデン側にも伝えているはず。いきなり変更したら、事情を知っているアドルク陛下はともかく、他の人間は不審に思うのではないか。

俺は様々な懸念を抱いていたが、父はあっけらかんとしたものだった。


『もともと執政官は、お前をいつか王子に戻すという条件で納得してくれていたんだよ。お前があまりにやる気になっていたからあえて言わなかったがな』


したり顔で言う彼に、俺は少々脱力してしまった。父と執政官の間でそんな話がされていたとは。

< 226 / 259 >

この作品をシェア

pagetop