華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情

幸せな未来を、もう一度


広間に用意された長いテーブルを囲み、フェルベート家とエングレンス家とが向かい合って席についている。

会食の前に顔合わせを行うものだと思っていたこの時間、私は隠されていた事情をすべて知ることとなった。


セイディーレが実は第一王子のフレイヴ殿下で、幼い頃は私と一緒に遊んでくれていたこと。

私の家系には魔力を持つ人がたびたび現れ、私にもその力があり、それを悪用しようとする人たちに狙われていたこと。

そして、私を守るためにフレイヴが身代わりになってくれていたこと──。

考えもしなかった事実が次々と明かされ、ただ呆然とするしかなかった。

まさか、国を巻き込んでの騒動になっていたなんて。私のために、あの黒の騎士が生まれていたなんて……。

言葉を失くして、見るともなしにテーブルの上の燭台を眺めていると、右隣に座っているお父様が申し訳なさそうに言う。


「リルーナを城から出さなかったのは、こういう事情があったからなんだ。寂しい思いをさせて悪かったな」


城に閉じ込められていた理由については納得したし、仕方なかったとも思う。

実際に、城にいる間はとても大事にされていて、危険とはかけ離れた生活をしていたおかげで、魔力を使ってしまうこともなかったのだから。

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