華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
以前自分が言ったセリフをそのまま返されて、ドキドキするとともに、なんだかとてもしっくりきた。

好きだから、か。私もそのシンプルな想いだけで、あなたのことを信じていられたんだものね。

彼も同じなのだと思うと、この上なく嬉しい。

濡れた頬もそのままに、目を閉じて彼のぬくもりを感じていると、そっと身体が離される。そして、フレイヴはなにかを差し出してくる。

それを見下ろした私は、驚いて目を見開いた。


「これ……!」


手渡されたものは、山賊に盗られてしまった母の形見のネックレス。取り返してくれたんだ……!

ロケットの中を確かめてみると、四つ葉もちゃんと綺麗に残っている。フレイヴがくれた、宝物が。

感謝でいっぱいになりながら見上げると、彼はとても優しい笑みを浮かべていた。


「俺との記憶はないはずなのに、ずっとそのクローバーを大事にしてくれていた。そういうお前のことが、なによりも愛しいんだ」


緩みっぱなしの涙腺から、とめどなく温かい雫が溢れる。

こんなに幸せでいいんだろうか。彼のために、私はなにもしてあげられていないのに。

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