華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
それでも、大好きな人の微笑みは精神安定剤のようで。

少しだけ気が紛れた私は、誓いの言葉もしっかり言えたし、指輪の交換も無事終えることができた。

ダイヤが輝くそれを薬指に嵌めてもらうとき、彼が『やっと手に入れた』と感情がこもった声で呟くから、波瀾万丈なこれまでを思い返して少しうるっとしてしまったけれど。


冷たくて笑わない黒い騎士は、セイディーレという名前とともに消えたかのように、フレイヴはとても溺愛気質だ。

一緒に城で暮らすのは今夜からで、これまであまり会う機会がなかったせいもあってか、会えたときはいつでもどこでも抱きしめてきたのだから。

過去も今も、どちらの彼も好きだけれど、やっぱり愛されていると実感できるときが一番幸せに思う。


しかし、時々セイディーレを思い起こすような顔をすることもある。

最近あったのは、セアリエが私の目の下についたまつ毛を取ろうとしてくれていたところを、たまたまやってきたフレイヴが目撃したとき。

キスをするようにでも見えたのか、彼の形相は恐ろしいほど冷たかった。

もちろん誤解はすぐに解いたものの、どうもセアリエとは馬が合わないらしい。

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