華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
私も苦笑していると、フレイヴはおもむろに席を立ち、セアリエの前にしゃがんで目線を合わせる。そして、綺麗な笑みを見せた。


「リルーナ姫が何事もなく生きてこられたのは、あなたのような、優秀な騎士殿に守られていたからです。感謝をすることはあっても、恨むことなどありえません」

「殿下……」


今の言葉はきっと、お世辞ではなく本心だろうな、となんとなく感じた。フレイヴだって、同じ騎士だった者として、団長である彼のことを尊敬しているはずだから。

じーんとしているようなセアリエは、フレイヴにつられてようやく立ち上がった。

彼は少し思案したあと、遠慮がちに「これは個人的にお頼み申したいことなのですが……」と言い、わずかに首をかしげるフレイヴに向かって再び熱く語り出す。


「いつか、私とお手合せ願いたいのです! その若さで最高指揮官の座を手に入れたあなたと、一度剣を交えてみたいと思っておりました!」


……なにを言うかと思えば、剣の稽古の申し込みとは。

王太子にそんな申入れをするとは勇気がある……とでもいうように、周りの人たちがざわつく。

どれだけやり合いたいのか、目を輝かせて熱弁し出すセアリエを、フレイヴはぽかんとして眺めている。

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