華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「……暑苦しい人だな」


ぼそっと呟いた彼のぼやきは、私しか聞こえていないみたいだ。

さっきから温度差の激しいふたりが妙におかしくて笑いを堪えていると、フレイヴも観念したように口元を緩めて頷く。


「わかりました。私も、剣を振り回さずにおとなしくしているのは性に合わないんですよ。ぜひ、受けて立ちましょう」


凛々しい笑みを浮かべる彼と、セアリエは嬉々とした様子で握手をしていた。

フレイヴもずっと騎士として過ごしていたんだもの、たまには剣の稽古もしたいわよね。なんだかんだで、セアリエのことも決して嫌いではないだろうし。

最初は険悪だったふたりだけれど、きっとこれからはいい関係を築いてくれそうで、とても嬉しく思った。


賑やかな今夜の宴には、貴族だけでなく一般市民も訪れて良いことになっている。

皆は私たちにお祝いの言葉をくれて、食事をしたりダンスを踊ったりと、きらびやかな会場で思い思いに過ごしていた。

私もフレイヴと一緒にしばらく貴族の方たちと歓談していると、人を掻き分けてくる男女の姿が目に入る。

手を繋いでこちらにやってきた可愛いツーショットをしっかり認識した瞬間、私はぱあっと顔を輝かせた。

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