華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
記憶の断片が蘇ってきたのは奇跡だ。少しでも思い出せてよかった。

それを聞いたマジーさんは、一瞬丸くした目をすぐに柔らかく細め、にこやかに頷く。


「そうか。きっとそれが、愛の力というものさ」


ちょっぴり恥ずかしくなるけれど、私もそう思う。

肩をすくめてはにかんでいると、マジーさんはなにかを思い出したようにはっとする。


「そういえば、ずっと前に媚薬を飲まされたって? まったく、素人が作るからお粗末なモンになっちまうんだよ」

「あぁ、そんなこともありましたね……」


あのときはいろいろと大変だったなと思い返し、やれやれといった感じで話す彼に苦笑を返した。

そんな私の耳のあたりに、マジーさんは顔を近づけてこそっと囁く。


「俺なら完璧な薬を作ってやれるからな。フレイヴとの夫婦生活がマンネリ化してきたらおいで」

「えぇっ」


あられもない助言にギョッとした。いやいや、マジーさんの薬だとしても媚薬はもうこりごり……!

せっかくだけど遠慮しておきます、と私が断るより早く、眉間にシワを寄せたフレイヴが不機嫌な声を出す。


「リルーナにくだらないことを吹き込むな。そんなものに頼るわけがないだろう」

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