華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
そうして再び神経を張り巡らせて歩いていると……。


「あった!」


朱い花を見つけ、思わず声を上げた私は、急いでそこに駆け寄った。

雑草に紛れて、アルツ草がしっかりと地面に根を張っている。やっと見つけられた……!

感激するのもつかの間、今度はこれを根を傷つけずに取らなければいけない。

メーラの鞍につけていた直径二十センチほどの籠を取ると、ドレスが汚れるのも構わずしゃがみ込む。そして、籠の中に入れていたスコップで、アルツ草の周りを掘り始めた。

丁寧に掘り起こすと、多めの土と一緒にそっと籠に入れる。こうしておかないと枯れてしまうのだと、書物に書いてあったのだ。

なんとか籠にしまうことができて、私は大きく息を吐き出した。

よかった……あとは薬師さえ見つければ、お父様を助けることができる。そう、安堵したときだった。


怯えたようなメーラの鳴き声と共に、低い唸り声のような音が身体に響いてくる。

はっとして振り返ると、二メートルはあろうかという見たこともない生き物が、すぐそこで微かな月明かりに照らされていた。

蛇のように長い胴体と、ドラゴンのようなギザギザとした大きな羽。手には鋭い爪が、頭には二本の角が生えていて、鈍い金色に光るつり上がった目で私たちを見据えている。

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