華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
幸せを噛みしめながら大きな窓に近づくと、淡いオレンジ色の光が灯るクラマインの街並みを一望できて、眺めもため息が出るほど美しい。

ここはハーメイデンではないと思うとやっぱり少しセンチメンタルな気分になるけれど、新しい生活が始まるワクワク感もある。

様々な思いを抱いて外を眺めていると、後ろから腕が回され、優しく包まれた。


「……やっと、ふたりきりになれた」


安堵のため息交じりに呟かれ、一瞬忘れていた緊張があっさり戻ってくる。でも、嬉しいことに違いはない。

ドキドキしながらこくりと頷き、私を抱きしめる手に自分のそれを重ねた。

少し身体の向きを変えられ、流れるようにキスを交わす。誓いのキスとは違う、濃密でとろけるようなそれに、思考もとろとろに溶かされていく。

……あぁ、なんだかんだ言って、私もこうされるのを待っていたんじゃない。

唇を重ねたら、私にもしっかりとあったらしい欲情が湧いてきて、恥ずかしく思いつつも身体は悦びに満ちていた。

けれど、顎に添えられていた彼の手が下りてきて、開いた胸元からするりと入り込んでくると、ビクッと反応して唇を離してしまう。

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