華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
それがスイッチになったかのようにキスは激しさを増し、ふたりの身体がベッドに沈む。

「可愛い」とか「愛してる」とか、囁かれる言葉のひとつひとつは、媚薬以上におかしくなりそうなほどの快感をもたらす。

そしてなにより、確かな安心感の中で抱かれるのは、この上ない幸福感を得られた。


「もう、離れなくていいんだね……」


ひとつになって抱きしめられたとき、私の口から吐息とともにそんなひとことがこぼれた。

上体を起こすフレイヴの身体をよく見れば、無数の傷跡がある。これは、彼が騎士として戦ってきた証。私を守ってくれた証だ。


「これからは、私がフレイヴを支えるから」


少しでもなにか力になりたくてそう伝えると、彼はとても柔らかな笑みを浮かべ、「ありがとう」と言った。

お互いの存在を刻み込むように、絡まって、溶け合う。

夫婦になって初めての夜は、泣きたくなるくらいの幸せに包まれる、温かな夜だった。




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