華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
言えなかった言葉を君に
クラマイン王国の姫となり、早くも三か月が過ぎた。
悪巧みしている人に狙われるようなこともなく、山賊が影を潜めたクラマインの街はとても平和で、ハーメイデンとも前以上に密で良い関係を築くことができている。
フレイヴは淡々と確実に政務をこなし、私はエングレンス家の皆さんや城内の人々に温かく接してもらいながら、旦那様のサポートをする日々。
その息抜きのひとつとなっているのが、定期的にやってくるセアリエとの剣の稽古だ。
城内の練習場で行われるそれは、王太子と隣国の騎士団長の試合が見られると有名になり、毎回見物客が集まって盛り上がっている。
今日も巻き起こる歓声の中、ふたりが剣を交えていた。私は観客と一緒に、成り行きを見守る。
互角の戦いを繰り広げていたものの、カシャン!と剣が地面に落ちる音とともに、ひとりが膝をついた。
一瞬静まる場内。私も息を呑む。
黒い軍服に身を包んだ懐かしい指揮官姿のフレイヴが、カチャリと剣を鞘に収めた瞬間、とっても悔しげな叫び声が上がった。
「あぁーっ、また負けた~……!!」
「もうひと息で切りつけられるところでしたが、惜しかったですね」