華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「ひっ……!」


まともに悲鳴も上げられないくらい恐怖におののく私は、ぺたんと地面に尻もちをついてしまった。

こ……これが魔物!? どうしよう、どうしたらいいの!? 怖いっ!

ガタガタと震える私に、魔物はゆっくり顔を近づける。そして大きく口を開け、長い舌と、唾液にまみれた尖った牙をむき出しにした。

このままじゃ食べられちゃう──!


「きゃあぁっ!!」


叫び声を上げ、両手で頭を抱えて身を縮める。

絶対絶命だ。そう思い、死を覚悟したときだった。



「だから言っただろうが」


聞き覚えのある、至極冷静な声が耳に入った直後、闇をつんざくような苦しげな叫び声が響き渡る。

思わず耳を塞ぎ、ぎゅっとつぶった目を恐る恐る開いてみると、息が止まりそうなほど驚いた。

私の前に立ち塞がり、不思議な青色に光り輝く剣をふりかざすのは、昼間会った冷たくも麗しい男──セイディーレ閣下だったから。

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