華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
ブレードが長いそれを、斜めに十字を描くように素早く振り下ろす。

あれだけ大きくて無敵のように思えた魔物は、彼の華麗な剣さばきによって、あっという間に霧のように消えていった。

森の中に再び静寂が訪れ、木陰に逃げてしまっていたメーラもそろそろと私のそばに戻ってくる。近くには、闇夜に溶け込むようなセイディーレの黒い馬もいた。

まったく物怖じしていない彼が剣を鞘に納めるのを、私は地べたに座り込んだまま見上げて問いかける。


「な……なんで、あなたがここに……?」

「この森を見回りするのも俺の役目だ。微かに唸り声が聞こえたから来てみれば、案の定だったな」


セイディーレは涼しげな顔でそう言った。

彼が来てくれなければ、間違いなく死んでいただろう。私は命の恩人に深く頭を下げる。


「本当に、ありがとうございました。助けてくださって」

「俺は魔物を退治しただけだ。お前を助けたつもりはない」


相変わらず素っ気なく返され、私はヒクッと口の端を引きつらせた。やっぱり冷たい……。

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