華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「あれだけ言ったのに、本当に森に入るとは……勇気があるのかバカなのか」


気だるげに腕を組む彼の声には、呆れが滲んでいる。

バカってひどい……けど、そうだよね。忠告してくれていたのに、それを無視してこんなに暗くなるまで森にいて、案の定襲われそうになったんだもの、反論の余地もない。

がっくりとうなだれる私を慰めるように、メーラが頬ずりしていた。

セイディーレは寄り添う私たちを見下ろしたまま問いかける。


「アルツ草は見つかったのか?」

「はい……あ!」


いけない、今の騒ぎで枯れてしまってないかな!?

慌てて籠の中を覗くと、朱色の花も緑の葉も、ちゃんと生き生きとしていた。ストレスに弱い植物だというから焦ったけど、とりあえず大丈夫だったみたい。


「あぁよかった、枯れてなくて」

「目的が済んだなら早く出るぞ」


ほっと胸を撫で下ろす私はさておき、セイディーレはさっさと馬に乗ろうとする。私も急いであとを追おうとした、のだけれど。


「あ、ま、待って!」


足に力が入らず立てないことに気づき、思わず引き留めた。彼は怪訝そうに振り返る。

< 28 / 259 >

この作品をシェア

pagetop