華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「俺はこれで失礼する。マジーさん、この子一晩泊めてやってくれ」


彼がそれだけ言い、取っ手に手をかけようとするのを見たマジルヴァさんは、片眉をピクッと上げた。

「なにぃ?」と言いながらテーブルに籠を置くと、ムッとした顔で閣下にずいっと詰め寄る。


「お前、この子をわしなんかとふたりっきりにして、良心は傷まんのか!?」


腰に両手を当て、説教するように言うマジルヴァさんの下半身あたりを、閣下はなぜか冷たい瞳で見下ろしてひと言。


「あんたの“そこ”はもう使い物にならないだろ」

「そーいうことじゃないわいボケ! 乙女の気持ちをもっと考えろってことだ!」


くわっと怒りだすマジルヴァさんだけれど、閣下はまったく動じていない。というか、“そこはもう使い物にならない”ってどういう意味?

頭の中にハテナマークを渦巻かせていると、マジルヴァさんは気を落ち着かせるようにひとつ息を吐き出した。


「セイディーレと三人で飲み明かしたほうが楽しいだろう。なぁ、リルーナ姫?」


私に目を向けてそう言う彼は、穏やかな表情に戻りつつある。

マジルヴァさんには失礼かもしれないけれど、私も三人のほうがもっと楽しいかな、と思う。もう少し、閣下と話してみたいし……。

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