華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
冷酷と優しさの狭間
私たちが待っている間、マジルヴァさんはさっそくアルツ草の下処理を始め、同時に夕食の準備もしてくれていた。
彼は料理が得意らしく、しばらくしてテーブルに並べられたシチューやザワークラウトはすべて手作りだそう。閣下も一緒に、小さなテーブルを囲んで食べ始めた。
たくさんの野菜を煮込んだシチューは、コクがあってとても美味しい。マジルヴァさんは、「城で暮らしてるあんたらには物足りんだろうが」と言っていたけれど、まったくそんなことはなかった。
三人だと少し窮屈なくらいの小さな木のテーブルで、身を寄せ合って食べることは初めてだけれど、不思議と落ち着く。
ライ麦のパンと一緒に、優しい味がする料理を味わう私の向かい側で、マジルヴァさんは自分のグラスにビールを注いでいる。
本当にお酒が好きみたい。こうやって誰かと食事するのも久々らしく、とても楽しそうだ。
「リルーナ姫、あんたもわしのことはマジーと呼んでくれていいからな」
気さくにそう言ってくれることが嬉しくて、私も笑みがこぼれる。
「わかりました。マジーさん」
「……俺も、“閣下”はやめろ」
ふいに、私の斜め左の位置で黙々と食べていた彼がそう言い、私はパンをちぎる手を止めた。