華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
それでも、思うことは変わらない。


「私、マジーさんと……セイディーレに、会えてよかったです」


柔らかく微笑んで言うと、マジーさんは一瞬真顔になった。そして、なにか思いを巡らせるように少し目を伏せ、ぽつりと呟く。


「きっとこれも、運命というやつだろうな……。アドルク陛下に、よろしく伝えておくれ」


そのときの彼の微笑みは、なんだか哀愁が漂っているように見えて、少し気になった。“運命”というのも、なんとなく深い意味があるような気がする。

けれど、なにも聞くことはできず、私は「はい」と頷くだけだった。


食事を終えてしばらくしてから、できあがった薬をポーチに大事にしまい、小屋をあとにする。

山腹から見える空は今日も晴れ渡っていて、庭ではメーラが一晩おとなしく待っていてくれた。


「なにか困ったことがあったら、またいつでもおいで。気をつけてな」

「ありがとうございます。マジーさんもお元気で」


優しく声をかけてくれたマジーさんに、もう一度お礼を言った私は、彼に見送られながら、もと来た山道を引き返し始める。

夜とはだいぶ雰囲気が違うけれど、一本道のためなんとか迷わずに山を下りることができた。

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