華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
セイディーレと初めて会った、森の入り口あたりまでやってきて、ふと立ち止まり、少し離れたところにそびえる城を見上げる。

……今度クラマインに来るときは、私がこの国の王太子と結婚するときだろうか。

そう考えると、少し憂鬱になる。黒い騎士の冷たく綺麗な顔も、ずっと脳裏から消えることはなく、胸はすっきりしないまま城に背を向けた。


気持ちとは反対に清々しい日差しを浴びながら、ハーメイデンへとメーラを走らせる。

しばらくは順調に走っていた。しかし、もう少しで国境というあたりで、胸元に入ってしまったネックレスをなに気なく触ったら、チェーンが切れたのか地面に落ちてしまった。


「あっ! メーラ、ちょっと待って、止まって!」


慌てて綱を引いて止めると、ネックレスを落としてしまったあたりに戻る。

なんで切れちゃうのよ、大事なものなのに。

眉を下げる私はメーラから降り、地面を見ながらうろうろする。数分でネックレスを見つけ、一安心して手を伸ばした、そのとき。

私よりも先に、ごつごつとして汚れた大きな手が、ゴールドのそれを拾い上げた。

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