華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
すると、彼らは「ぐわぁぁぁ!」と雄叫びを上げ、目を押さえてのた打ち回り始める。

ひゃぁ~、マジーさん、これ効きすぎ!

三人が大泣きして痛がる姿に驚きながらも、私は急いでメーラに飛び乗り、全速力で逃げ出す。


「くそっ、あの女ァー!!」


悔しそうな彼らの叫び声は、あっという間に遠くなっていった。


しばらく休むことなく走り、林を抜け、もう追ってこられないだろう開けた田園地帯まで離れてから、ようやくメーラを歩かせる。

後ろを向いて誰も来ないことを確認すると、私は大きく息を吐き出した。


「はぁ、助かった……。ありがとうね、メーラ」


頼もしい彼のたてがみを撫でると、嬉しそうに首を上げ、尻尾を高く振った。

あのときメーラが攻撃してくれなければ、逃げられなかったかもしれない。この子に感謝だ。

でも……ネックレスは奪い返せなかった。お母様の大切な形見だったのに。

寂しい首元に手を当てると、悔しさでじわりと涙が滲む。

もっと大切に扱うべきだった。城に置いてきたほうがよかったかもしれない。後悔しても遅いけれど、自分の不甲斐なさに気持ちは沈むばかり。


「ごめんなさい、お母様……」


ぽつりと呟き、メーラの背に揺られながら、目元を指で拭っていた。

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