華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
それからは何事もなく、ハーメイデンの街に戻ってきたのは空が薄紫色に染まる頃だった。見慣れた街の景色に、心がほっとする。
街灯が灯り始めた道を抜け、城の門を目前にしたとき、その脇に立っている白い制服を着た男性が見えてはっとした。同時に私に気づいたその人も、目をまん丸にする。
「姫様!」
声を上げて駆け寄るのは、心配していたであろうことが見て取れるセアリエだ。
彼に会えたら一気に安堵感が押し寄せ、笑顔でメーラから飛び降りる。
「セアリエ! ただい──」
「あぁよかった、ご無事で……!」
私が挨拶するのも構わず、心底ほっとした様子のセアリエは、その大きな身体で私を包み込んだ。
しっかりと抱きすくめられ、驚きで息が止まりそうになる。
いくら心配していたからって、城の門前でこんなふうに抱きしめるなんて大胆すぎ! ほら、門番の兵士が凝視してるってば!
「ちょ、ちょっと、セアリエ!?」
「無理やりにでもついていくべきだったと後悔していましたが……本当によかった、この手にあなたを抱くことができて」
なに恥ずかしいこと囁いちゃってるの!
真っ赤になっているに違いない顔で、口をぱくぱくさせて硬直する私を、彼はぎゅうっと抱きしめて離さない。