華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
眠ったままのお父様は、相変わらず顔色が悪く生気がないように感じる。
けれど、『もう薬があるから大丈夫だよ』と声をかけ、看病をしてくれている使用人に薬を渡しておいた。
義兄様にも無事帰ったことを報告して、皆で夕食を食べたあと、綺麗な花と豪華なアンティークが置かれた、広々とした姉様の部屋で話すことにした。
ソルレが紅茶を淹れてくれている小さなテーブルを挟んだ向かい側で、ゆったりとウイングチェアに腰かけている姉様が改めて言う。
「よく無事に帰ってきてくれたわ。本当にありがとう、リルーナ」
彼女に微笑み返すと、ソルレが私たちに紅茶を差し出しながら苦笑する。
「私たちは気が気じゃありませんでしたけどね」
「そうよ。セアリエなんて、ずっと門のところで待ってたんだから」
カップを手に取りながらソルレに同意する姉様の言葉を聞いて、私は目が点になった。
「え、ずっと?」
「えぇ、門番と交代してまでね。ひと晩ロクに寝てないんじゃないかしら」
嘘、そんなに心配してくれていたなんて。あぁでも、私を見た途端あの熱い抱擁をかましてきたくらいだしなぁ。