華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「病気になったおかげで、なんだか丸くなったんじゃない?」

「そうかもな」


柔らかく口の端を上げる彼を見て、私も笑みをこぼし、丸くなったのは気のせいじゃないな、と確信していた。

わだかまりが解け、スッキリとした気分で部屋をあとにしようと、ベッドを通りすぎたとき、お父様が突然こんなことを言う。


「これからは、もっと外へ出てみるか」

「えっ?」


一瞬耳を疑い、再び彼のほうを振り向いた私は声を裏返らせてしまった。

お父様は平静な表情で、淡々とこんな提案をしてくる。


「来月、クラマインで会談がある。それまでに完璧に回復したら出席するつもりなんだが、お前も一緒にどうだ?」


思わぬ言葉に、私はぱっと表情を明るくした。

行けることならもちろん行きたい。クラマインの城や街のことを、もっと肌で感じたいもの。

それに……もしかしたら、もう一度あの人の姿を見られるかもしれない。毅然として麗しい、黒の騎士の姿を。

彼は私に会いたくはないだろうけど、姿を見ることくらいは望んでもいいよね?


「私も行っていいの?」


胸を躍らせて確認すると、お父様は口元を緩めて「あぁ」と頷いた。

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