華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
さっきからずっと心が晴れない。そういうときや、なにか悩んだときはここへ来ているのだ。

リズミカルにキィンと響く音を聞いていると、不思議と気持ちが落ち着くから。

ハーフアップにした長い髪を涼しくなってきた風にそよそよとなびかせながら、機敏な動きで剣を振る様子を見ていると、しばらくして二組とも訓練を終えた。

こちらに向かってくる彼らは、それぞれ私に挨拶をして武器庫の中へ入っていった。

一番最後にやってきた短い金髪の騎士は、爽やかな汗を拭いながら私に笑みを向けてくる。


「姫様、またなにか考え事をしておられたのですか?」


銀色のプレートアーマーを身に着け、盾を持つセアリエは、勇ましくてカッコいいなと単純に思う。

もちろん剣の腕前も見事だった彼に、私も笑って「ちょっとね」と返した。セアリエは私がどういうときにここへ来るか、察しがついているらしい。

それからセアリエが武器や防具を返してくるまで、私はそのまま待っていた。普段の制服姿に戻った彼は、私の隣にやってくる。

夕食までの少しの間、こうやってふたりで話すことがたまにあり、お互いに息抜きの時間となっているのだ。

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