華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
私たち以外誰もいなくなった広場を見ながら、なんとなく昼間お父様に言われたことを報告する。


「今度、お父様がクラマインでの会議に私も連れて行ってくれるって」

「それはなにより。姫様は外へ出たくて仕方ないでしょうから」


いたずらっぽく細められた二重の瞳を向けられ、私は苦笑を漏らした。

その通りなんだけど、ただ喜んでもいられないのよね……。

城の建物に囲まれて狭く見える黄昏の空を見上げ、小さくため息を吐き出す。


「結婚が現実味を帯びてくると、正直憂鬱になるわ。セアリエは、私がお嫁に行くのは嬉しいことだろうけど」


覇気のない笑みと本音をこぼすと、セアリエも同じようにゆっくり空へと視線を持ち上げて言う。


「えぇ、大変喜ばしいことですね、騎士団長としてみれば」


最後に付け加えられた言葉がなんとなく引っかかり、私は空から隣に目線を移した。

セアリエは徐々に瞼を伏せ、重い声色で素直な胸の内を吐露し始める。


「ひとりの男として考えると、私も憂鬱です。……本心では、あなたを渡したくはない」

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