華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
独占的なその発言に驚き、私は目を見開いた。

“ひとりの男”、“渡したくはない”──そんなセリフを並べられると、まるで愛する人への告白みたいに思えてしまう。

まさか、ね?

なにかを堪えるようにぐっと拳を握る彼に、私はぎこちない笑みを作って小首をかしげ、「セアリエ?」と声をかけた。

彼もこちらを向き、真剣な光を讃えた青い瞳と視線が絡まる。そして、骨張った手がこちらに伸ばされ、私の頬にそっとあてがわれた。

いつもと違う様子に戸惑いつつ、鼓動が速まるのを感じていると、セアリエは憂いを帯びた微笑みを浮かべる。


「できることなら、あなたを一生そばでお守りしたいと、何度願ったことか。騎士としてではなく……」


切なげな声で噛みしめるように言葉を紡がれ、ドクンと心臓が大きく揺れ動いた。

“騎士としてではなく”……その続きは、ためらうように口を閉ざしたけれど。なんて言おうとしたのか勝手に想像してしまい、動揺する。

セアリエは、私のことをただの姫だと思って接していたわけではなかったのだろうか。決して叶うことのない想いを、抱き続けていた……?

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