華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
願ってもないチャンスの到来
月が替わり、城から見える、遠くに広がる畑が青々としてきた頃、ついにクラマインで開かれる二国間協議の日がやってきた。
お父様の具合もだいぶ良くなり、日帰りなら問題なく行けるだろうと判断されたため、一安心だ。
年に一度行われているこの会談は、国王同士で行っているもの。今回は特別に、一族そろって訪問することになった。
政治や経済の話をするだけでなく、親睦を深めるという目的もあるらしいけれど、どんな話し合いがなされているか詳しくは知らない。
馬車の窓から、流れていくハーメイデンの街並みを眺めていると、一緒に乗っているミネル姉様が問いかけてくる。
「緊張してる?」
「んー、あんまり。それより、姉様や皆と国を出られることが嬉しくて、ワクワクする」
「もう、呑気なんだから」
まったく緊張感のない私を見て、長い髪をすっきりとアップにした美麗な姉様は、呆れたように笑った。
今日の私は、フリルがあしらわれたサーモンピンクのドレスを纏い、髪は一本の編み込みにして花飾りをつけている。
いつもに増して綺麗な格好をさせてもらえているだけでも、気分が上がるのよね。