華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
むくむくと興味が湧いてくると同時に、胸が早鐘を打ち始める。
彼が近くにいると思うと、なぜかドキドキしてしまうのだ。王族の方々と会うことのほうが緊張するはずなのに。
でも、せっかくここまで来たんだもの、会いたい。どうしてこんなに彼を求めてしまうのか、自分でもわからないけれど。
二階にあるらしい会議室へと向かおうとするお父様に、私は思い切って申し入れる。
「ねぇお父様、私は会談に出なくていいんでしょう? その間、城の中を見ていてもいい?」
大理石の広い階段を上ろうとした彼は、足を止めて困ったように眉をひそめる。
「リルーナ、勝手に歩き回るようなことは……」
「構いませんよ、アドルク陛下」
ふいに階段の上から穏やかな声が響き、お父様と同時に見上げる。お父様はすぐさま、「ノルカーム陛下」と口にして、頭を下げた。
にこやかに階段を下りてくるのは、クラマインの国王であるノルカーム陛下だ。
五十歳である彼は、ギリギリ肩につかないくらいのグレーの髪が似合うダンディな人で、年相応の落ち着きと貫禄がある。
私たちもそろってお辞儀をすると、陛下は微笑みを絶やさずに言う。
彼が近くにいると思うと、なぜかドキドキしてしまうのだ。王族の方々と会うことのほうが緊張するはずなのに。
でも、せっかくここまで来たんだもの、会いたい。どうしてこんなに彼を求めてしまうのか、自分でもわからないけれど。
二階にあるらしい会議室へと向かおうとするお父様に、私は思い切って申し入れる。
「ねぇお父様、私は会談に出なくていいんでしょう? その間、城の中を見ていてもいい?」
大理石の広い階段を上ろうとした彼は、足を止めて困ったように眉をひそめる。
「リルーナ、勝手に歩き回るようなことは……」
「構いませんよ、アドルク陛下」
ふいに階段の上から穏やかな声が響き、お父様と同時に見上げる。お父様はすぐさま、「ノルカーム陛下」と口にして、頭を下げた。
にこやかに階段を下りてくるのは、クラマインの国王であるノルカーム陛下だ。
五十歳である彼は、ギリギリ肩につかないくらいのグレーの髪が似合うダンディな人で、年相応の落ち着きと貫禄がある。
私たちもそろってお辞儀をすると、陛下は微笑みを絶やさずに言う。