華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
“家族”。その温かい響きの言葉が、良くも悪くも、じわじわと胸に染みていく。

セアリエは静かに瞼を伏せ、お父様は柔らかい表情で、「お気遣いいただき、ありがたく存じます」と軽く頭を下げた。

陛下は本当に気の良い人だ。私が城内を見たかったのはセイディーレを探したかったからで、もうその目的は果たされちゃったけどね。

まぁでも、会議中は暇を持て余してしまうし、ちょうどいいか。なんて気楽に考えていた、そのとき。


「案内をつけましょう。セイディーレ、こちらへ」


予想もしなかった陛下の言葉で、私は思わず“えっ!?”と叫びそうになってしまった。

これはセイディーレも想定外だったらしく、一瞬驚いたように目を見開いた。しかし、すぐに平静に戻り、言われた通りに前へ出てくる。

陛下の隣に並ぶと、制帽を取り、気品を感じさせる綺麗な一礼をしてみせた。陛下は満足げに微笑み、私たちに紹介してくれる。


「彼はわが国の指揮官を担っています。愛想が悪いところは玉に瑕ですが、かなりの腕利きなんですよ」


そうそう、愛想ね。と小さく頷きつつ、皆と同じくクスッと笑いをこぼした。

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