華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
「私もお供いたしましょうか?」

「あ……閣下がいらっしゃるから大丈夫よ」


城内を案内してもらうだけなのに、セアリエは心配しているのかな。

それは無用よ、という意味を込めて笑って返すと、彼はちらりとセイディーレを見やり、わずかにためらいながらも「承知いたしました」と頷いた。

セアリエったら、本当に過保護なんだから。

若干呆れつつ皆が会議室へ向かっていくのを見送っていると、「では、ご案内いたします」と言って、セイディーレが歩きだす。

……あぁ、予期せぬふたりきりの時間がやってきてしまった。胸が苦しいのは、コルセットをつけているせいじゃない。

でも、話せる絶好のチャンスだ。ノルカーム陛下に感謝!

そわそわしながらセイディーレのあとに続き、とりあえず話しかけようと試みる。


「あ、あの」

「こちらの奥は調理場になっております。ただいま会食の準備をしておりますので、中の様子はご覧いただけませんがご了承ください」


広間のように広い廊下の奥にある大きなドアを手で示し、淡々と説明する彼に、私は目をしばたたかせる。

この人、本当に案内だけするつもり? 私のこと覚えてる、よね?

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