華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
……でも、ちょっと正直に言いすぎたかしら? しつこかった? また引かれてしまうかも。

というかそれ以前に、悪魔とか言ったことで気を悪くさせていたらどうしよう。

今さらながら不安になり、前を向いて悩み始める。しかし、それは一瞬だった。

隣からクスクスと笑う声が聞こえてきたことで、意識はすべて彼へと持っていかれる。

再びセイディーレを見やると、珍しく瞳を細めて柔らかく笑っていて。ドキン、と軽やかに胸が鳴った。


「ここまでおめでたいやつは初めてだ。手に負えないな」


意地悪な発言とは裏腹に、笑顔はなんだかとても温かい。文句のつけようがないくらい魅力的で、目も心も奪われる。

初めて美しいものを見たときのような、感動すら覚えた。


「……どうして、いつもそうやって笑わないの? あなたの笑った顔、すごく素敵なのに」


また正直に口にしてしまうと、彼は笑みを消してぴたりと固まる。

もっと笑っているところを見たいんだけどな……。

少し思案した私は、ひとつの目標を決め、表情を明るくして声を上げる。


「よし、今日は私がセイディーレを笑わせてあげる!」

「は?」

「とりあえず、見学を再開しましょう」


ぽかんとする彼の腕をぐいっと引き、私は意気揚々とドアに向かって歩きだした。

見学はネタ探しのため。城の中よりも、彼の笑顔が見たいから。




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