華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
自分だけの秀麗なナイト
クラマイン城は私たちが暮らす城よりも広く、要塞の名残がありながらも豪華絢爛な内装がとても美しい。全体的にゴールドの装飾が施されていて、細部のデザインも凝っている。
二階、三階へと上がり、様々な部屋を見させてもらいつつ、私はセイディーレをどうやって笑顔にしようかと試行錯誤していた。
まず、目についたのは廊下に置かれた等身大の女性の石像。私は両手を広げ、それに近づいていく。
「久しぶりマリア~! 元気だった?」
大袈裟な演技で石像に話しかけ、肩を組んでみた。
セイディーレは、“頭大丈夫か?”みたいな目で見ている。
結構思い切ったボケだったんだけど……ま、まぁそうなるわよね。仕方ない。
次に、ノルカーム陛下のシックな執務室を見させてもらっていて、あることを思いついた。
陛下が座る一番大きな椅子の後ろに立ち、怪訝そうな顔をするセイディーレに向かって、身振り手振りで国王になりきる。
「さぁセイディーレよ、我のために笑ってみるがよい」
「誰だよ」
陛下の口調をマネしてみたものの、冷めた目をする彼に即刻突っ込まれた。
……ダメだ、致命的につまらない。私ってこんなに笑いのセンスがなかったのね……。