華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
一応、教養としてダンスの勉強はしているから、踊れないことはないんだけどな。

たしか、片方の手は向き合った男性と繋いで、もう片方は男性の腕に添えるのよね。両肘の位置は水平になるように。

それで、ステップは右足から後ろに一歩下がって……。

だいぶ前に教えてもらい、あまり実践することがなかったワルツをなんとなく踊ってみる。スローなステップとターンを何回か繰り返してみたとき、「ぶっ」と吹き出すのが聞こえた。

足を止めてセイディーレのほうを振り向くと……。わ、笑ってる?

腕を組み、片手を口元にあてた彼が、肩を震わせているのだ。まったく意図していなかった今、なぜ笑っているの?

ぽかんとしていると、口角を上げた彼は私を見て、ひとこと放つ。


「下手くそ」

「んなっ!」


ヘ、ヘタクソですってー!?

ガンッ、と頭にバケツが落とされたような気分。そんなにひどかったかしら。

ショックで愕然とする私に、セイディーレはクスクスと笑いながら遠慮なく言う。


「習ってるときに言われなかったか? お前の動き、ひいき目に見てもロボットだぞ」

「えぇっ!?」

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