華麗なる最高指揮官の甘やか婚約事情
曖昧な答えしか見つけだせずにいたとき、ふと動きが止まり、セイディーレの手が離れていった。

一瞬、なぜだか寂しさを感じつつ、気恥ずかしさで俯く私に、淡々とした声が投げかけられる。


「少しは舞踏会気分を味わえたか?」


あ……もしかして、『私も出てみたかった』と言ったから、擬似体験をさせてくれたの?

粋な計らいに胸を打たれて、ゆっくり目線を上げると、腕を組んだ彼は、「動きもさっきよりはマシだった」と言う。

しかし、すぐにふいっと顔を背け、口を手で隠して肩を震わせ始めた。どうやら、私のひとりワルツの光景が蘇ってきてしまったらしい。


「思い出し笑いしない!」


赤くなっているだろう顔でむくれる私。もう、そんなに後引くほどひどくはなかったはずなのに。

……でも、少しでも踊ってくれて嬉しかった。ようやく笑顔を見ることもできたし、これでよしとしましょう。


そのあと、クラマインの街を一望できる三階のバルコニーに出てみた。

遠くに海まで見える眺めが良いそこは、手入れされた綺麗な花壇や小さな菜園があり、とても癒される場所だ。

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