【短】屋根裏の王子様
ヒカルさんは、その名の通り、輝かしい人だった。
現代版、光源氏様とでもいおうか……。
「お言葉に甘えて、泉ちゃんの部屋にお邪魔しちゃおうかな」
「は、はい! いつでもどうぞ」
お母さんには、言えない。
ううん、友達にも。誰にも言えないよ……こんなこと。
このアパートの他の住人は、ヒカルさんのこと、知らないのかな?
「でもさぁ、泉ちゃん」
「なんです?」
「僕が出入りしたら、彼氏嫌がるんじゃない?」
ビックリするような質問である。
「彼氏なんていません!」
__生まれてからずっと、貧乏で。
恋愛とか、そういうことは二の次だった。
毎朝、新聞を配っていた。
あとは勉強を精一杯して、授業料の安い大学をめざして、そして今の生活がある。