【短】屋根裏の王子様
「わたし、平日と土曜は授業のあとみっちりバイト入れてるので、気にせず部屋使って下さいね。あと、日曜は丸一日働けるところを別に探してるところです」
「そっか」
どうして君は、そんなに働くの……?
なんて、野暮なことを聞くつもりはないけれど。
いつか君のその白く小さな手に、傷がつかないように。
寝不足でできたクマが、消えるように。
僕が、君をなんの苦労もしないで暮らせるように、してあげたいと思うよ。
それは、きっとそう遠くない、未来の話だ。
「当番とかも決めちゃいます?……あっ、ヒカルさん。ついてます」
身を乗り出して、ハンカチで僕の口元をぬぐってくれる泉ちゃん。
……あぁもう、この子は。
こんなにも、簡単に僕に近づいてくる。
襲われたいの?
「とれました!」
……なわけ、ないよね。
さて。
無防備なこの子の前で。
僕はいつまで、
〝優しい先輩〟でいられるかな__。
Fin.