アフタースクールラヴストーリー

優と修平は、毎朝授業が始まる前に自主練を行っている。
今日も普段通り二人で自主練を終え、教室へと向かった。

「おはよー。……あれ?」

不抜けた声と共に修平が教室に入ると、クラスの間に異様な雰囲気が流れていた。
それは普段周りの変化に疎い優にすら、すぐに分かるくらいだった。

「なあ、どうしたんだよこの空気?」

修平の元へ一人の男子が寄って来る。
男子はポケットからスマホを取り出す。

「これ見て」
「ん? 何これ?」

画面には、美奈と翔一郎が一緒に水族館で遊んでいる姿が映っていた。

「え? これ何? 本物?」

衝撃的な写真に、頭が追い付かない修平。
優は雷に打たれたような表情をしている。

「おい、これ本物なのか⁉」

声を荒げ、男子から奪うようにスマホを手に取る優。
修平はここまで動揺している優の姿を見るのは初めてだった。

「た、多分本当だと思う。さっき副崎さんが来て女子が質問したら、否定しなかったし……。それになんか、この後久田先生にこ、告白したとか……」

たどたどしく話す男子。

「美奈は⁉ 美奈はどうしたんだよ⁉」

優は険しい顔で、叫ぶように男子に尋ねる。
あまりの威圧感に男子は尻餅をついてしまう。

「落ち着け優。びっくりしてるだろ」

修平は優をなだめ、一歩下がらせる。

「ごめんな。それで美奈ちゃんは、どこへ行ったの?」

男子と目線を合わせた修平は、努めて冷静に聞いた。

「ふ、二人が来る前に、走って出てっちゃった……」
「出ていった⁉ どこにだ?」

優は更に熱くなる。
険しい表情の中に、焦りの色が見え始めた。

「分かんない……」

そう答えて下を向く男子。
同時に教室が沈黙に包まれる。

「くっ……」

優は持っていたスマホを修平に投げつけ、教室の外へと駆け出した。

「おわっ。ちょっ、優!」

いきなり飛んできたスマホなんとか受け止める修平。
しかしその間に優は外へ出てしまい、止めることは出来なかった。

< 105 / 137 >

この作品をシェア

pagetop