アフタースクールラヴストーリー
「なあ、思ったんだけどさ」
今度はクラス全体に向けて、修平は話し出す。
「美奈ちゃんがしたことって、そんなに悪いことなのか?」
「はっ?」
先ほど美奈に詰め寄った女子達が、不快なそうな顔つきを見せる。
クラスの注目が一気に修平に集まり、目を丸くする生徒もいる中、彼は話を続けた。
「いやさ、そりゃ二人が水族館に行ったって話も、美奈ちゃんが告白したって話も、学校側にしてみれば大事なのかもしれない。けど美奈ちゃんがしたことは、普通に好きな人とデートして、好きな人に告白した。それだけのことだろ。それが偶然先生だったってだけで、やってることは悪いことじゃないと思うんだよ。先生と二人だけで出掛けたのは問題だろうけど、やむを得ない事情があったのかもしれないし、それを皆で批判するのはおかしいと俺は思う」
「でも副崎さんは生徒会長なんだよ。それで生徒会顧問の久田先生に手を出すなんて、生徒会をそういうことに利用していたって言われても仕方ないじゃない」
一人の女子が反論する。
「それは俺らがどうこう言える話じゃない。それに、美奈ちゃんはそんなことをするような子じゃないでしょ。あの子は生徒会の仕事を真面目にやっている中で、久田先生を好きになったんだと思う。普段のあの子を見ていれば分かるよ。皆だってそう思うだろ」
修平の問いかけに、クラスの何人かが頷き始める。
不快感を示していた女子達も、修平の意見に言い返すことができない。
「皆おはよう、ちょっといいかな……」
そこへ担任の高山先生がやって来る。
彼女はクラスの様子を見た途端、顔面蒼白となった。
「そ、副崎さんは⁉」
「み、美奈は……」
ちひろはいたたまれない表情をして黙り込んでしまう。
代わりに、修平が説明する。
「少し前に、飛び出していったそうです……。ついでにそれを聞いた優も、追っかけていきました」
「どこへ、どこへ行ったの⁉」
修平の両肩を取って問いかける高山先生。
「それは……」
修平は唇を噛みしめる。
クラスの生徒達も同じ様子だった。
「分かったわ。とりあえず皆は席に着いて。次の指示あるまで静かに待機していなさい」
高山先生は生徒達が席に着くのを確認することもせず、大慌てで職員室に駆けて行った。
蝉の鳴き声はより威力を増し、気力を失いかけた太陽に追い打ちをかけていた。