アフタースクールラヴストーリー

副崎が泣き止むと、父親は彼女の頭を数回撫でてから、横谷先生の前に立つ。

「教頭先生ですね」
「は、はい」
「この度は、娘がご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」

父親は頭を下げる。

「いえ、そんなのいいんですよ。娘さんにも色々な事情があったと思いますし、こういうことを対処するのも教師として当然ですよ。生徒は私達にとって宝ですからね」

横谷先生はさっきまでの態度を一変させ、諂うように美辞を並べる。

「そうですか。それでは、こちらから二つお願いをしてもいいですか?」

頭を上げた副崎の父親は、やや口調を強めて言う。

「え、ええ。何でしょう?」
「まず一つ。先程教頭先生が美奈に対して仰った言葉を撤回して頂きたい」
「先程の言葉?」
「はい。教頭先生は美奈に、生徒会の仕事をやっつけ仕事でやっていたのではないかと仰いましたよね?」
「あ、ああ……。ですがそれは、言葉の綾と言いますか……」
「私は美奈が、娘が生徒会の仕事をやっつけ仕事でやっているとは微塵も思いません。私は不器用で、今まで娘と上手に接することができませんでしたが、何事にも真面目な娘を誰よりも近くで見てきたつもりです。一人で夜遅くまで勉強していたり、資料を作っていたり、常に真剣に物事に取り組む美奈の姿が、私の目には確かに映っていました。それは他の場所でも変わらないでしょう。普段学校での美奈を見ている皆さんなら分かるはずです。違いますか?」
「お父さん……」

厳かに話す副崎の父親。
それを見ていた副崎は静かに、しみじみとした笑みを浮かべる。

子どものことがどうでもいい親なんて、どこにもいない。
親にとって一番大切なものこそが子どもであり、親はいつだって子どものことを見ているのである。
それが子どもに上手く伝わらず、関係がこじれてしまうこともある。
副崎親子もその状態に陥ったが、間違いなく副崎の父親にとって副崎はかけがえのない存在であり、今までずっと彼女を見守っていたのだ。
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