アフタースクールラヴストーリー

「くっ……。わ、わかりました……」

横谷先生は鼻元を微妙に動かしたが、言い返すことはしない。
そして副崎の前に立ち、頭を下げた。

「先程はひどいことを言ってすまなかった。あの言葉は撤回させてもらう」
「ああ……、はい」

意外すぎる出来事に、拍子抜けしたような顔をする副崎。

「これでよろしいでしょうか?」
「はい。ありがとうございます。それともう一つ、これは他の先生方にもお願いしたいのですが……」

副崎の父親はこの場にいる先生達を見ながら言う。

「娘の気持ちを、美奈の気持ちをどうか、尊重してやってもらえないでしょうか?」
「え?」

僕を含めた全員が目を丸くする。
当事者である副崎でさえも、驚きを隠せないという感じだ。

「娘は本気で久田先生に恋をしています。本当に純粋に彼を想っています。皆さんもお思いのように、教師と生徒間での恋愛に対して世間からの風当たりが強いのは事実です。美奈自身、今後も批判を受けることはあるでしょう。ですが私は、娘に後悔をしてほしくない。好きな男性への想いを、全力で貫いてもらいたい。流石に今回のようなやり過ぎた行動は、私が責任を持って慎ませます。困っているところを助けてやれとも言いません。だからせめて娘の気持ちを尊重し、見守っていてやってくださいませんか?」

副崎の父親が再び頭を下げた。
これほどの地位の人のこうした姿を見ると、逆らったら何かあるのではないかと怯えてしまう。

「むう……。もう勝手にしたらいい。私は付き合いきれん」

本気で呆れ果てたのか虚勢を張っているのか分からなかったが、教頭先生はそう言ってこの場を去ろうとする。
御手洗先生と僕以外の先生もそれに続いて、この場を離れる。

「ありがとうございます」

先生達が見えなくなるまで、副崎の父親は頭を下げ続けていた。

< 128 / 137 >

この作品をシェア

pagetop