アフタースクールラヴストーリー
下校時間も近づき、僕と林先生はもう一度生徒会室に顔を出した。
平沢と斎藤は自分の作業を終え、帰宅の準備をしている。
副崎と石動はまだ取り込み中だった。
「美奈、仁、そろそろ下校時間だから、片付けて帰る準備しなさい」
「はい」
林先生が帰宅を促すと、二人は返事をして使っていたものを片し始める。
石動、平沢、斎藤の三人は先に外に出たが、副崎は帰宅前に会議資料のチェックを林先生に求めた。
「林先生、今度の生徒議会に出す資料なんですけど、確認お願いできますか?」
「分かったわ。でもどうせなら、久田先生に見てもらいましょう」
「えっ、僕ですか?」
「一応私も目を通しますけど、折角なので気が付いた点があれば何か言ってあげてください」
「分かりました。副﨑、見せてもらってもいいかな?」
「はい……」
副崎は目を伏せ、そのまま僕に資料を渡す。
少々気まずいが、仕事は仕事だ。
資料を受け取った僕は、一通り内容に目を通す。
「うーん……。特に気になるところはないかな。林先生、どうですか?」
「そうですねえ……。大丈夫だと思います。これでいきましょう」
資料チェックとか学生時代を通してほとんどやったことがないから、何を見れば良かったのかいまいち分からない。
まあ林先生も特に指摘がないようなので、これで大丈夫だろう。
僕は副崎に資料を返す。
「ありがとうございます。……あ、あの、久田先生!」
「ん、どうした?」
「え、えっと……、これからよろしくお願いします」
一度顔を上げた副崎だが、またすぐに下を向いてしまう。
「う、うん。こちらこそよろしく」
「では私はこれで」
他の生徒会メンバーを追いかけ、副崎は生徒会室を後にする。
「美奈、何か言いたそうでしたね。言いたいことがあれば大体は素直に言う子なんですけど……」
不審めいた顔をする林先生。
それを見て僕は、暈したような笑みを作る。
「ま、まあまた、明日とかにでも聞いてみましょう」
「それもそうですね」
僕らは生徒会室の戸締りを確認し、職員室へと帰っていく。
こうして、僕の生徒会顧問としての日々は始まった。
生徒会室の窓際から差し込んでいた夕陽が、僕の視線の先にある何かを隠しているように思えた。