アフタースクールラヴストーリー
「はあ……」
生徒会のメンバーと校門の外で別れた後、私は一人で溜息をつく。
まさか久田先生が生徒会の顧問になるなんて。
林先生の後任には一番良いとは思うけど、私がこんな状態だからな……。
結局昨日のお礼も言えてないし。
自責の念を抱えながら、帰り路を歩く私。
すると後ろから、私を呼ぶ声が聞こえた。
「美奈」
「あ、ちひろ」
同じクラスの高崎(たかさき)ちひろ。
一年生の時から仲が良く、二人でどこかに出かけることもある。
私よりも背が高く、普段からしているポニーテールがトレードマークだ。
「一緒に帰ろ」
「いいよ。横山君はいいの?」
「うん。今日は藤澤と帰るんだって」
ちひろには横山修平(よこやましゅうへい)君という彼氏がいる。
彼も同じクラスで、私の幼馴染である優君とも仲が良い。
二人とも野球部なので、その縁もあるのだろう。
「そっか」
私はちひろと並んで歩き出す。
ちひろと横山君が付き合い始めたのは去年の八月。
二人で夏祭りに行った時に横山君の方から告白したそうだ。
ただその前からちひろは横山君に好意を抱いていて、どちらかと言うと先に好きになったのはちひろなんじゃないかと私は思っている。
そんな恋愛の先輩であるちひろなら、今の私の気持ちを整理するヒントをくれるかもしれない。
「ね、ねえ、ちひろ……」
「何?」
私は、思い切ってちひろに質問をぶつける。
「ち、ちひろは横山君を好きになった時、どんな気持ちだった?」
「へ? どうしたの急に」
予期せぬ質問をされたからか、目を丸くするちひろ。
「いや、何となく疑問に思って」
私は平静を装う。
暫く私を見つめたちひろは何かを察し、しめしめと口角を持ち上げる。
「ああ、これは遂に美奈にも、気になる人ができちゃった感じですかあ?」
「べ、別にそんなんじゃないし……」
揶揄ってくるちひろの言葉に自然と反応し、私は自分の顔が赤くなったことに気付く。
ちひろは面白そうだという目をして、私を見つめている。
「で、でも、ほんとにその人が好きかどうかっていうのがよく分からなくて……」
恥ずかしくて、頭が真っ白になりそうだ。
だがちひろは私の言葉を聞くと真剣な表情に変わり、「これはふざけてはいけませんな」と小さく呟いて私の質問に答えてくれた。